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2009年6月

下宿先の部屋

 ある芸術の専門学校に行くことになり、そこに通うための下宿をさがしていたところ、ちょうどいいアパートが見つかる。コンパクトだけどなかなか使いやすそうだ。建物の感じも場所も私の好みである。

 この学校はみんなでそろって受ける授業などはないらしい。グループを作り、やりたいテーマを追求をする。先生も教科書もない。そのようなものが学校と呼べるのだろうか?と少々疑問に思う。門のところで歌のグループのメンバーがそれぞれ思い思いに練習している。かなり先鋭的な考え方を持っている人たちらしい。

 下宿は外側も内側も一見新しそうに見えるが、実は結構年数がたっているので、掃除のついでに害虫の駆除をしておいた方がいいと言われる。わたしは部屋に泡状の殺虫剤を撒く。この泡はしばらくすると消え、毒性も残らないというが、一応あとで掃除機をかけておいた方がいいかなと思う。

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叔父の葬式

 夜中に目を覚ますと、家の中に数人の人がいて何かの相談をしている。叔父が亡くなったのでその葬式のことについてだという。叔父は手に負えないというほどではないが、かなりヤクザな人物であった。何年も会っていなかった従兄弟たち、学生時代の友人などが、おそらく初対面であるはずの夫と旧知の間柄のように親しげに話している。

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映画館で…

 すっかり忘れていたことを思い出した。長いこと陸に上がっていたけど、わたしは本来は水に棲む生き物だった。水の中にはときどき帰っていたはずだが、眠りから覚めると陸に戻り、いつもきれいさっぱり忘れた。映画館でそのことを急に思い出したのだ。その、あまりファンタジックではない、連続する即物的なシーンの背後にもうひとつ別の世界を重ねて眺めてみると、ちょうどバランスがとれて好ましい絵になる。

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星型の札

 わたしは住居とは別に部屋を借りることにする。そこは高層マンションの一室で、わたしにとってある重要な場所をすぐ眼下に見下ろせるところにある。マンションの外観はよくわからない。というのも、自分の部屋にはいつも地下道を通ってその建物の地下に行き、エレベーターで部屋の前まで直行するからである。その部屋で女性と会う。30代~40代に見えるが、とても長く生きている人らしい。彼女は星型の札をわたしの身体のあちこちに貼るとこんなことを言う。「あなたにはまだ足りないところがあるから、これを貼っておく。ちょっとその意味を考えてみて。」それはなんとなくわかる気がした。「ところでここに来ればまたあなたに会えるの?」「あなたがそれを望むならね。」そこで初めてわたしは彼女の顔を見る。たしかに以前どこかで会ったような気がする。

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門を通過する。

身体の細胞の一つ一つが眠りに就くと
意識はそこを離れて別のところに向かう
地面から少し離れたところを滑るように移動する

途中にある門は、今日はすべて開け放たれていて
わたしを引き留めるものは何もない
いくつかを越えていくと
ヘリポートのような場所に出る

光の量が多くなる
ここからは移動の速度や方向が急変する

巨大な蜻蛉が
音もなく飛び立ったような気がする

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父と娘

父と娘がテーブルをはさんで会話をしている。

父親は穏やかな人格者で、社会的にもある程度高いポジションにいる人物らしい。
しかし、若い人、特に娘のような存在には、自分の知識や考えを伝えにくいと言う。

わたしは電車やバスを乗り継いで移動の途中隣に居合わせただけなのだが
いつの間にか、娘と同化して話を続ける。

「話すのをあきらめないで。
 最初はうまくいかなくても、お互いが心を開いていることが大事なの。
  気持のすれ違う父娘はたくさんいるけど、本意ではないはず。
 少なくともわたしは、もっとお父さんの話を聞きたいの。」

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もてなしの御膳

そこでのもてなしの印象は
しばらく経っても鮮やかに思い出すことができた。

御膳の上には小さな皿がたくさん置かれていて
それぞれ様々な色の食べ物が盛られていた。
わたしはまず白い御飯を探し
それから周りの食べ物を順々に食していった。

食し味わうほどに、呼吸が緩やかになる。
ひとつひとつはほんの一口でも
普通の食べ物以上に満たされる気がする。

高山植物の花のような
濁りのない光を通した色。
濃厚な香りは
鼻の奥を通ったとたんに
煙のように消えてしまうので
なかなかその輪郭がつきとめられない。

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