狐の貌
宿泊することになったのは4、5年前第三セクターの事業として建てられた施設だったが、今は来る人もまばらで、お婆さんと何人かの家族で細々と営業している民宿のようになっている。
工事に着工してからそこが古い遺跡だったことが判明したのだが、そのときはさして重要なことだとは判断されず、工事が中断されることはなかった。でも、計画の段階でわかっていたらこんな場所に建てることはなかった、と土地の人は言う。遺跡が損傷を受けることになったし、わざわざこんなところに泊りに来る人もいないと言いたげな様子だ。
日が暮れて外に出ると、なるほど古い遺跡があったと思えるような雰囲気がある。場のエネルギーを測るために、ちょっと飛行してみる。
あくる朝、つるっとした顔をした何人かの女性グループが訪ねてきて、建物の2階に上がっていく。そこで化粧をするのだと言う。その中の一人が妙な動きをするので不審に思ってあとをつけていくと、わたしの泊まっている部屋に入り、鞄からわたしの本を盗もうとする。わたしはあわてて取り返そうとするが、相手もなかなか返そうとしない。格闘する中でその者の顔をよく見ると、なんと狐の顔をしている。異様に細長い目が金色に輝く。
「ばれたか。」
狐は驚くわたしにむかいニヤッと笑ってそう言うと、あっかんべーをする。
| 固定リンク


最近のコメント