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2009年3月

狐の貌

 宿泊することになったのは4、5年前第三セクターの事業として建てられた施設だったが、今は来る人もまばらで、お婆さんと何人かの家族で細々と営業している民宿のようになっている。

 工事に着工してからそこが古い遺跡だったことが判明したのだが、そのときはさして重要なことだとは判断されず、工事が中断されることはなかった。でも、計画の段階でわかっていたらこんな場所に建てることはなかった、と土地の人は言う。遺跡が損傷を受けることになったし、わざわざこんなところに泊りに来る人もいないと言いたげな様子だ。

 日が暮れて外に出ると、なるほど古い遺跡があったと思えるような雰囲気がある。場のエネルギーを測るために、ちょっと飛行してみる。

 あくる朝、つるっとした顔をした何人かの女性グループが訪ねてきて、建物の2階に上がっていく。そこで化粧をするのだと言う。その中の一人が妙な動きをするので不審に思ってあとをつけていくと、わたしの泊まっている部屋に入り、鞄からわたしの本を盗もうとする。わたしはあわてて取り返そうとするが、相手もなかなか返そうとしない。格闘する中でその者の顔をよく見ると、なんと狐の顔をしている。異様に細長い目が金色に輝く。

 「ばれたか。」

 狐は驚くわたしにむかいニヤッと笑ってそう言うと、あっかんべーをする。

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夢から覚める場所

そこでは禍々しい者たちと同居していた。
いたるところに汚泥のようなものがまき散らされていて
移動するにはそれを踏みつけていかなければならないのだが、
わたしはたいして気にも留めず暮らしている。

それはもともとの育ちが上品ではないからだと思う。
わたしたちは同じ穴のむじなだ。
それに禍々しく見える者たちもよく見ると普通の人たちだ。
ただ、変わったものを常食しているのか、酒の酔いが醒めないのか、
何かの中毒になっているように感じる。
彼らはときどき自嘲的な変な笑い方をしたり、
意味不明な言葉の使い方をする。
同じ言語を使っているのにおかしなことだと思うが
わたしには全く理解できない。
これは彼らを非難しているのではなくて、
ただわからないということ、それだけだ。

不思議なことに、わたしはこれが夢だということを知っている。
この夢が終わったら、どんな場所で目覚めるのかなと思う。

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砂漠の墓

夢から覚めると
あたりには
乾燥しきった大地が広がっていて
時折強い風が
砂を巻き上げて通り過ぎて行った。

わたしはここで
どれくらいの間
眠っていたのだろうか?

眠りに就く前に
何があったのか…

わからない。

けれども
ここから立ち上がり
歩いて行く。

何度でも
ここに立ち返り、
また。

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バームクーヘンの層

 時間はバームクーヘンのような丸い形の層をなしていて、「わたし」という存在はその中の点をランダムに移動しながら転生してきた。「転生してきた」というのは正確ではないかもしれない。その点での意識はすべて同時に存在するというべきか。そしてそれらは相互に影響を与えあっているのだが、お互いにそのことは知らないでいる。

 点の中でひと際強い光を放っている場所がある。そこで何か起きたのかということをわたしは近頃知りつつある。だんだんと深く知るにつれて、現在の自分が変わってきたように感じる。何が変わったのか?それはとても具体的なことだ。立ち方とか歩き方、話し方、人やものの見方、感じ方、などということ。

 強い光を放つ場所は、影もまた濃い。そのことについてわたしは何も手出しはできない。つまり、影を消すとか薄くするというようなことは。けれど影は光に付随してできているのであって、光に先立つものでもない。影響し合っているのは光であって、影ではないということもごく最近知った。 

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コンパスのような道具

 わたしは山村の寄宿学校に通う学生である。今までよりさらに奥地にある施設に移ることになるのだが、そこに行く途中には川があって、橋を渡らなければならない。

 移動の当日は運悪く天候が荒れている。予定より早めに出発した何人かで橋を渡ろうとすると、地元の人に自分たちの利用しているもっと上流の橋を使うように言われ、後をついていく。渡り方についても細かい指導がある。上流ではさほど天候は荒れていない。あるいは嵐が去った後なのかもしれない。

 変わって、場面は何日か前の様子。授業では課題が出ていて、移動先の施設をRVして作図しなければならない。作図のための道具を同僚の友人に借りる。それは櫛の歯のようなものがたくさんついたコンパスみたいな器具で、彼女独特のものだが、よく見るとところどころその歯が抜けていて使用不能である。大分使い込んでいたから新しくしなきゃいけないと思っていたのよ、と彼女は言う。

 それにしても、その器具の使い方を知りたかったなとわたしは思う。それを参考に自分独自のものを作りたかったな、と。

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眠りに落ちる瞬間に

両頬を叩いたひとがいる。
痛くはなかったけれど
その音にびっくりして目を覚ました。

この瞬間を覚えておきなさい。
あなたがそこを意識して意思を持つことができれば
その意思は実現する。

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新しい路線の開通

 わたしは少し前から鳥の飛ぶ能力を身につけようと練習していた。なかなかできなかったのが近頃急速に上達し、かなり高いところまで行けるようになった。でも、周りの人たちはまだそのことを知らない。

 その頃、今まで遠くを通っていた鉄道の路線が近くを通るようになる。電車に乗ってみると車内には、野生の鳥が高圧線に触れ感電する危険があるので、事前に保護するために捕まえて安全なところまで運ぼうとしている人がいる。運ぶ途中でかえって傷つけることになるのではないかと反対する人もあり、口論になっている。

 そんなことにはおかまいなく電車は走り続ける。わたしの実家の前を通るようだ。電車が通れるか通れないかの狭い所にいつの間に線路が敷かれたのかと訝しく思う。

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三人のフリークス

 わたしは影の半身(恋人)と連れだって、どこか町の中心から外れた閑散とした場所を歩いている。

 するとそこに警察らしき人たちが近づいて来る。警察といっても威圧的なところはなく、わたしたちが無防備なので、自分たちにはそれを保護する義務があるのだと言う。そして素早く簡易式のテントのようなものを組み立てる。

 しばらくその中で過ごしていると、同じように保護された三人の小さい人が連れてこられる。三人とも感覚器官の一部に機械や動物や昆虫など、人間のではないものが組み込まれたフリークスである。彼らは自分で歩くこともできない赤ん坊だが、とても年取った者のようにも見える。

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