言葉の源泉
その人の言葉は
勢いよく流れる水のようだった。
声を聴きながらその水の源泉をたどっていくと
痺れるほど力強く、しかし微細に振動する場所があった。
わたしはそこでほんの少しの間、美しく織られた毛布をかけられて
甘美な旋律の音楽を聴いた。
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その人の言葉は
勢いよく流れる水のようだった。
声を聴きながらその水の源泉をたどっていくと
痺れるほど力強く、しかし微細に振動する場所があった。
わたしはそこでほんの少しの間、美しく織られた毛布をかけられて
甘美な旋律の音楽を聴いた。
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部屋の東側には床から天井までの大きな窓がある。
その窓の右上の方だけが暗く、よく見ると窓枠に蜘蛛の巣がかかっている。
しばらくして光が差し込んでくると、細い糸がきらきらと輝く。
東の窓から入って来る夢を摑まえておくことができるように
取り除かず残しておくことにする。
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また、あの顔だ。
それは一瞬の表情なのだが、わたしの視線はそれを切り取り、
残像が網膜に焼き付けられる。
渋い、苦い、少し塩辛い、乾いた、砂のような…
それが喜怒哀楽のどれなのかわからない。
彼は快・不快のどちらを感じているのか。
少なくともそれは何らかの感情を持っていると思うのだが、
大部分が慣れていない、わたしにはなじみのない成分ということだろうか?
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ある女性からの要請で、数年来通っているところがある。
そこはわたしにとってはかなり緊張感を強いられる場所で
彼女が何故行くようにと勧めるのか、その意図もわからないのだが、
何かの大きなエネルギーがはたらいていて、自動的に行ってしまうような感じなのだ。
先週の木曜日、いつもの通りマンションのドアを開けて中に入ると、
テーブルの前に彼女が座っていた。
わたしたちがそこで会うのは初めてである。
こんにちは、お久し振り。
艶やかな微笑み、これは昔から変わらない。
「こんにちは。ところで今日はどうしてここにいるの?」
これからは今までとは違う振る舞いをしていいのよ。
一方的に受け取る時間はもう終わったの。
そう言って彼女はまた微笑む。
わたしは言葉よりもその表情の中から何かを読み取れるような気がして、
じっとその顔を見つめてみる。
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あなたの学びの1セクションが終わりに近づいている。
ある朝、不意にそんな声が聞こえたような気がした。
「声」はいつも突然やってくるので、最初は何のことか理解できない。
わからないままに心の隅に置いておくと、あるときこれまた突然解ったりする。
わたしは自分と異なる要素を持つもの、それを批判するのではなく、
理解し学ぼうと思ったのだ。ここ数年はそういう学習の時期だった。
しかしそれに同化しようとしたり、できないからといって苦しんだりする必要はないのだ。
わたしには別のやり方の方が向いている。
そのことに気づいただけでもこの日々は無駄ではなかった。
1月の空気は凛として冷たい。
でも、空は抜けるように青くて、わたしの心もそのようであった。
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魄戸という経穴がある。第三胸椎と第四胸椎の間の外三寸のところにあるといわれている。鬼が手を掛けるところで風邪もここから入ってくると、昔とある鍼灸の先生から聞いたような気がする。
そんなことを今朝になって思い出した。というのも昨晩こんなことがあったからだ。
いつものように、眠りに着く前にあれこれいろんなことに思いをめぐらせていると、不意に、背中の上の方、首の付け根の下辺りに誰かの手が触れている。
君はどこかあのひとに似ているね。
声が聞こえたような気がしたが、気味が悪いとは思わなかったのは何故だかよくわからない。声の主は男性だったが、冷たくて柔らかい、好ましい声だったからかもしれない。さらに不思議なことに、彼の言う「あのひと」という人物にわたしには心あたりがあった。
それで、わたしは思い切って尋ねてみることにした。あなたの言うあのひとというのは、いったい誰のことですか、と。彼の答えはわたしには意外なものだった。
それは君がなるべき人のことだよ。
はっと不意をつかれたような気がしたが、瞬間的にわたしはその言葉の意味を理解した。理解したと言うより、それは直接わたしの心臓の中心を射抜いたのだ。
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駅に着くと日は既に傾いていたが、日没までには少し間があったので、夫婦岩まで歩いていってみることにした。
風は凪いでいて、海の表面は滑らかでブルーがかった真珠のような色をしていた。
夫婦岩の近くの神社には、注連縄を輪にして、中を十文字に補強してある輪じめ縄が掛けてあった。
二見浦は古代から太陽霊の復活を祈る聖地であった。人々は海の水に身を浸し禊をして太陽の霊(スピリット)を身につけようとした。輪じめ縄はその祈りのシンボルであり、日の御像(ミカタ)であるという。素朴で無駄がなく、ぎりぎりまで抽象化された形が、心に深く刻み付けられた。
振り返ると、海とは反対側の山の端に太陽が沈もうとしていた。名残惜しかったが、帰りの電車の時間が迫っていたので、さっき来た道を引き返し駅へと向かった。
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