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2008年10月

大アルカナのパスワーク(16塔)

 わたしは塔の中にいて、雷の音を聴く。直撃しているような気配はあるのだが、塔がある程度光や音を吸収しているらしく、中では微かな振動を感じるだけだ。小さな金属片がオルゴールボールの中を動き回っているような、柔らかな鈴のような音が塔の中に反響している。

 この塔に使われているのは、物質と非物質の中間の素材だ。

 それは、現実には存在しないということだろうか。形がないということか。

 形は存在する。ある瞬間には。次の瞬間には、存在しない。つまり、あることとないこととの間の存在形態をとっているということだ。

 なるほど。今は目の当たりにしているのでよくわかる。しかし、通常の世界に戻ってこの感じを実感として覚えていることは出来ないかもしれない。

 ところで、やっとここへ来れたのだね。おめでとう。今日は以前壊れたところの復元をしよう。もう殆んど治っているけど、最後の一箇所はここへ来ないと出来ないのだよ。

 柔らかく温かい光がわたしを包む。頭の右側の方から眩しい金色の光が入ってくる。それは小さなチップのような形になり、頭の中にはめ込まれる。

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大アルカナのパスワーク(15悪魔)その3

 金属を打つ音は次第に軽くなって、あたりに拡散していく。

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 山の中の細い道を誰かが登って行く。鬱蒼とした森の中に、錫杖を突く音が響く。

 しばらして木々の途切れる場所に来ると、忽然と塔が現れる。朱塗りの五重塔。朱は橙に近い色ではなく本物の朱、丹の色、真紅である。よく見るとそこには様々な色の繊細な模様が刻まれている。

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大アルカナのパスワーク(15悪魔)その2

 突然、右の空間に金属を叩くような音が鳴り響いた。熱く焼けた鉄を打つような音。次第にわたしの心臓の鼓動も速くなっていく。

 熱い!右半身の熱さが耐えられなくなりそうになったので、急いでその空間を出ようとすると、どこかから声が聞こえてくる。

 その熱さは心理的なもの。つまり、あなたの心が作っている温度だ。

 そうか、幻覚ということか。しかしそう思ってみても、熱さは変わらない。「それならどうすればいいの?どうしたら熱くなくなるの?」

 そのパスはあなたの一部であって全体ではない。全体とのつながりを思い出せば、熱いとは感じないはずだ。

 すると、すぐに焼けた鉄のような感じは消え、空間が眩い光で満たされる。

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大アルカナのパスワーク(15悪魔)その1

 向かって左側の男は雄弁だった。いかにも自信ありげに自説をまくし立て、ユーモアを表現しているつもりなのか、ときどきアルルカンのような奇妙な立ち振る舞いをする。

 わたしは彼のいっていることは空虚だと感じる。無意味な動きも多すぎる。よく見ると首から繋がった紐が途中で切れている。

 不意に右の空間で金属を打つような音が響き始める。それは次第に速さを増していく。

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